修了生・現役生の声

修了生の声

上野健太

水土里ネットおきなわ(沖縄県土地改良事業団体連合会)
博士後期課程修了(2006年度)

2007年3月に学位を取得して本専攻を修了した上野と申します。大学院修了後、民間農業土木コンサルタントを経て、現在水土里ネットおきなわに勤務し、2回目の暖かい冬を迎えています(2015年2月現在)。現在、水土里情報システムという農業分野の地理情報システム(GIS)の開発に携わっています。

私は本専攻入学前、農業土木コンサルタントで長年GISシステムの開発に携わっていました。当時、GISの農業への活用という課題をかかえた私にとって、GIS学会の農政 経済GIS分科会(武部先生が幹事)は、新たな知見をえる貴重な場でした。

分科会参加を機に40代で本専攻に社会人入学し、本専攻で農業経済学や環境経済学を学びました。自身の博士論文の研究では、GISを環境経済学や環境評価に援用し、新たな評価手法の開発やその精緻化に取り組みました。お蔭で、GISの利活用範囲を単なるデータ管理ツールから、経済的な視点を加えた解析ツールにレベルアップすることができました。

この経験は、現在取り組んでいる沖縄特有の赤土流出対策シミュレーションシステムなど水土里情報システムの開発において活かされています。これから当専攻で学ぶ皆さんにとって、農地などの問題扱う上で地理情報は重要性を増すと思います。また、社会経済的な評価を行う上でも、GISは強力なツールとなり得ます。これからの若い人たちには、是非、社会科学、特に経済学的な分析にGISを積極的に活用されることを期待しています。ついては、ぜひとも研究対象に沖縄を選んでください。お待ちしています。

錦織真理

修士課程修了(2012年度)

私は学部生から本専攻に在籍し、農地の有効活用をテーマに、学部ではフィールドワーク、修士では計量経済による論文を執筆しました。大学に進む理由には、「巨人の肩の上に乗る」ことがあります。私自身、本専攻で、先生方や学友の肩に乗り、一人では得難い知見や視野を持てたと思いますが、同じテーマに手法を変えて取り組めたことがそれをよく表していると思います。

また、修了後は一般企業に就職しましたが、そこでも本専攻の学びは活きています。ある経済学の教科書に「経済学は幸せを最大化するための学問」という記述があったことが印象に残っています。つまり、経済学の目的は、限りある資源をどう分配するかですが、農業経済学においては農業の特殊性を考慮する必要があります。特殊な事例に既存のモデルをどう当てはめるかという問題は、社会に出てから多く対面する課題であり、学生時代の思考の訓練はそういった課題に取り組む上で活かされています。

島 貴彬

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
修士課程修了(2013年度)

修士課程を終えたのちシンクタンクへ就職し、現在は地方公共団体の政策立案をサポートする仕事に取り組んでいます。

仕事柄、食や農、環境をテーマとするお話を頂戴することも多いのですが、これらのテーマをめぐり、大切にしたい価値観や実現したい社会がお客様によって大きく異なることに、改めて驚かされる日々を過ごしています。地域経済や中山間地域の振興、自然環境や生物多様性の維持保全、都市生活の質を向上する手段としての食や環境……。近接した領域のことを話しているはずなのに互いの視線は交わることはなかなかなく、そこに生じる緊張関係のなかで、せめて、束の間の握手くらい現出させることはできないかと、模索しながら業務に当たっています。

不思議なもので、判断に迷い、悩む局面になるほど、大学院時代に身に着けた知識や経験が顔をのぞかせます。それも多くの場合、より判断を迷わせる存在として登場するのですが、あまり悪い気がしないのは、研究室で過ごした時間に価値があったと、今なお思えるからなのでしょう。

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